「バイク旅、野田知佑と沢木耕太郎」

高校3年の時、部活を引退して「さあ、次はどうする」となった時にようやく考え始めました。
バイクが好きだったので、自動車整備の専門学校にでも行こうかなぁ、とも思いましたが、
専門学校は就職する職種と直結しているので、そんなすぐには決まらない、決めていいのか?と迷い、とりあえず大学に行って、
4年間の間で考えようと、まったくのモラトリアムを目指して?受験勉強を始めたものでした。

幸い浪人することも無く入った大学では、サークルなどには興味が持てず、一人でバイクに乗っていろいろな所へ行きました。
2年生からは夏休みには北海道へキャンプツーリングに行くようになりました。
今振り返ってみると、当時は空前のバイクブームであり、キャンプブームのはしりだったようです。
北海道はバイクに乗る人間の中では憧れであり、キャンプをするようになったのは、少しでも長く北海道にいるためには宿泊費を抑える必要がありました。
また、景色の良い場所にテントを張り、星空を眺めて過ごせるというのもテント泊の良さでもあり、それはわたしにとって必然でもありました。

大学の中では友だちと呼べる人はいませんでしたが、旅先で出会ったいろいろな方々からは、たくさんのことを学ばせてもらいました。
おもしろかったのは、やはり北海道のキャンプ場であった人たちでした。
毒にも薬にもならない大学生の私に、学校の中ではきっと聞くことの無いような社会経験の話や、会社を辞めて3年フラフラしているとか、
次の仕事を頑張るために充電しているとか、バブルの終わりの頃だったのですが、人生は金じゃないんだよ・・・、とつぶやくおじさんとか。
たくさんたくさん。

大学時代にはそんな人たちとの出会いと別れを繰り返しながら、たくさんの本を読んで過ごしました。
そして、自分がいかに無知で狭い考え方だったかを思い知ることができました。
何をすべきか、何ができるか、何に向いているのか、そしてどう生きるか。ずっと考えていたような気がします。

たくさんの本を読んだ中で、この頃、最も影響を受けたのはカヌーイストの野田知佑と「深夜特急」の沢木耕太郎です。
野田知佑は大学生の時、何かしなければ・・・、とずっと考えていた時に、購買で見た「のんびりいこうぜ」というタイトルに引かれて手に取ったのがきっかけでした。
沢木耕太郎は文章の構成も好きですが、深夜特急(文庫版)の後書きに「男は26歳までに旅をしなければならない」といったようなことが書いてあり、
その言葉がどこかにあって、自転車で日本一周をしたのも26~27歳の時でした。

いろいろな考え方や言葉達に出会い、自分なりに出た考えは、
誤解を恐れずに言えば、人に迷惑を掛けなければ、「人生は何でもあり」で「自分が主人公になって」「後悔の無いように楽しめば良い」ということです。
もちろん、そのためには自分で責任を持つことが前提ですが。
一期一会的にそれきりの人もいれば、その頃から20年以上付き合いが続いている人もいて、今の自分の考え方を作るうえで、かけがえのない人たちです。