「もう一度描かせて」

ほっとしたのも束の間、次は本文の推敲です。
英語でのやり取りを日本語にしているので、馴染みのない航空関係の単語などの使い方や
意味が変わってしまっていないかという事を確認するために、旭川空港の管制官の方にチェックしていただきました。
お忙しい中、指摘していただいた所の再チェックも含めて3回も読んでいただきました。
ここでも2人一組で確認していただき、さすがだと感動しました。

編集者との文章のやり取りはEメールで行いました。
航空用語自体が馴染みがないために、文章がどうしても長めになってしまい苦労しましたが、
読みやすく簡潔に、全体の意味が変わらないようにして作り直して送られてきた文章を読んだ時、
編集者ってすごい!と思いました。

本文もOKをもらい、ようやく後書きへ。
原稿用紙2枚ぐらいの文字数なら余裕だな・・、と考えていたのですが、
伝えたい事も沢山あり、つい難しい内容になってしまいました。
それでもとりあえず送ってみたところ、やはり難しすぎで、しかも「これを説明するには倍の文字数が必要ですよね?」と
逆質問されるぐらい、編集者の方は飛行機の事に詳しくなっていました。

やっと全部終わって、本当にほっとしました。
線画から描き直しになってからはとにかく間に合わせる事しか頭にありませんでした。
思い返しても、記憶がとても曖昧です。
本が出る、という高揚感よりも、やれやれやっとできた・・・、という感じでした。
本描きの前にも「たくさんのふしぎ」の過去のラインナップは見ていたのですが、
改めて見直して、自分もこの中に入るのか・・・、と思った時、
初めて「やばいかも・・・」と脚が震えたことを覚えています。

9月1日に店頭に並ぶ前の8月下旬に、著者献本が届きました。
恐る恐る開けて手に取った時の気持ちをどう表現すればいいのか・・・。

見た瞬間に思ったのは「もう一度描かせてほしい!」という事でした・・・。
恥ずかしくて「穴があったら入りたい」ほど絵が下手くそ・・・。
描いているときはここまでとは思いもしなかったし、決して手を抜くという事はありえないのですが、
最初の線画やその前のオリジナルの方が数段いいのでは・・・?

発売日までの何日間かは胃がちぎれそうでした・・・。
しかしながら、自分なりにベストは尽くしたし、もうどうすることもできないと腹をくくりました・・・。
最初の編集の方に、「絵がうまい人はたくさんいますが、これは内容が面白い」と言っていただいたことを思い出しました。
実際に書店で販売されているのを見ると、やっぱり恥ずかしい気もしましたが、
お金を出して買ってくれる人に対しても、もっと自信を持たなければ申し訳ないとも思うようになりました。

発売したし、もう自分の手から離れたから木工も頑張らなければと思っていたのですが、
新聞や雑誌からの予想外の取材が続いたりして、慣れないだけにその後はどっと疲れてしまいました・・・。

立体のものを作っていたので、正直、はじめは平面は楽なのかと思ったこともありましたが、
実際にやってみると、立体だろうが平面だろうが作り上げる大変さは同じでした。
平面の方が設備投資が少ない分、参入がしやすいだけに、逆に差別化が難しいと感じました。
絵本だけで生活するのは非常に困難で、それができている人は本当に一握りの、厳しい世界なのだと思いました。