退院後は、職場に復帰したものの、精神的に厳しく、退職を決意。
秋、フリーペーパーに旭川のホテルで文芸社の出版説明会があると出ていたので、どんなものかと行ってみました。
フロアの端に衝立で仕切った狭い空間に机が一つ。
誰もおらず、やっぱり帰ろうとしたところへ担当者が戻ってきました。
見てもらうような原稿もなく、「絵本を考えている」と話したところ、「ウチは絵本はやっていないんだよね」と。
相手は暇だから聞いてあげるという感じで、こちらも、絵本はないと言われたけれど、せっかく来たからという感じで話していると、
担当者はだんだんと、「それはおもしろそうですね!」というようになってきて、
最後は「ぜひ描いて見せてください。相談にのりますから」というようになりました。
私も悪い気はしなかったので、やはりちゃんと描いてみようと思いました。
雪の積もるころには会社を辞め、やることは息子の幼稚園の送迎と食事の支度のみ。
旭川空港に行って写真を撮りながら絵本の構想を考えていました。
絵の勉強をしたという事はなく、自転車で走っていた時に水彩で風景のスケッチを描いたぐらいだったので、
写真を見ながら飛行機の構図を考えました。
ストーリーの流れは空港から空港まで、飛行機が行う管制官との無線での交信。
自分にとって一番身近だし、取材もしやすい旭川空港発の飛行機がいい。
北海道内を結ぶプロペラ機だと航空路管制が短い。
羽田空港だとJ社かAIRDOのどちらかですが、J社は相手にしてくれないだろうなぁ・・・。
AIRDOがダメだったら架空の航空会社にしようと、旭川空港の事務所で聞いてみると「いいですよ」と快諾していただきました。
大体のコマ割りも決まり、描きながらページの増減をしていくという事にして、描き始めました。
撮りためていた写真を元に、描き込む要素の少ない絵から描き始めたのですが、
いざ絵にしてみると、もう少し違う角度がいいかなという事もあり、それだけを撮りに行ったりという事もありました。
用紙は普通のスケッチブック、線画は0.5と0.3mmのシャープペンシルを使いました。
飛行機は直線も曲線も定規を使って描きました。
最初はフリーハンドで描いてみましたが、カチッとした線が描けなかったのですぐに定規を使いました。
雲形定規はすぐにRが違うものが欲しくなり、3個になりました
ある程度は本で勉強していたので、飛行機に関する知識は随分増えていたつもりでしたが、
見落としていることや思い違いをしていることもあると思い、まずは旭川空港の管制官の方にお話を伺いに行きました。
以前、旭川空港の空港祭りで管制塔に入った時の写真を持って行ったので、この時は話だけでしたが、
本だけでは知ることのできない、感覚的なことやタイミング、そして何よりも安全に、という事を感じることができました。
その後も札幌ACC,東京ACC,羽田空港にも取材に行きました。
実績もなにもない、絵本を描きたいと思っているというだけの私をよく入れてくれたなぁと、本当にありがたいことです。
東京に取材に行くときはもちろんAIRDOで、機内の写真を撮りたいという事を乗る前に旭川の事務所に挨拶に行きました。
話はストーリーに盛り込むことはできませんでしたが、撮影後もCAさんにお話を聞かせてもらいたいへん参考になりました。
CAさんの仕事だけでも十分絵本にできそうでした。
取材や撮影なので出かけることもありましたが、約2ヶ月で線画を描きました。
最後の方は管制塔の中や、コクピットの絵のような細かいものを描きましたが、一枚に3日とか4日もかかるものもありました。