「工房設立」

雪の積もる頃には会社を辞め、絵本を描いたり飛行機の写真を撮りに行ったり、
短期で何件か特注家具屋さんの助っ人に行ったり、精神的なリハビリと称して釣りに行ったり・・・。

2009年9月に、絵本が2012年の「たくさんのふしぎ」で出版の予定になりました。
その時はずいぶん後だなぁと思ったのですが、後に福音館の月刊誌のスケジュールを知ると、
最短での発表という事が分かりました。

打ち合わせはあるものの、構成などの仕様が決まってから本描きするまでは時間がある。
木工から離れてみて、やはり悪くない仕事であると改めて思うようになっていました。
家具会社に勤めていた8年間で、とりあえずは一通りの物は作れるぐらいの知識と技量は身に着けたとの自負もあり、
一人でやってみようと少しずつ準備を始めました。

試作などは、前に勤めてた会社や知り合いの会社の機械を使わせてもらいながら作り、東川町内で工場の物件を探していました。
絵本の事もあったので、すぐに決まらなくても・・・、とのんびりと構えていたのですが、一年経っても思いの外決まらない・・・。
既成の建物を探していたものの、金額や広さなどで折り合いがつかず、もうこうなったら土地を買って建てるしかないか・・・、と
半ばあきらめつついたところに、現在の工場の話をいただきました。

自宅の一部屋はいつの間にか製品や箱などでいっぱいになっており、もうどうにもならないレベルになっていました。
資産価値としては厳しい条件ではありましたが、すぐにでも始めたい一心で契約しました。
それほど広い建物ではありませんが、元々はここで住宅用のキッチンを作っていたとのことで、
基本的な木工機械は数台あり、必要な機械は中古のものを入れました。

6年ぐらい物置として使っていたので、片付けながら機械を移動して床を塗ったり、一人ではとにかく時間がかかりましたが、
少しづつ生産ができるようにしていき、細々ではありますが、今に至るまで続ける事ができております。
支えていただいた方々に感謝しております。

年々悪くなっていく材料事情の中、個人的には正直、この先いつまで物作りができるかわからないと思っています。
初めて北海道に来た20歳のときに、なんとなく興味を持って調べ始めた北海道の歴史。
大学4年生の時にバイクで来た時は、卒業論文で北海道の開拓の歴史を書こうと、各地の郷土資料館を訪ねて走りました。
独学なので偏りもあると思いますが、北海道の歴史を調べ、感じ、考察するということは、かれこれ20年以上でライフワークにもなりつつあります。
北海道の歴史は木材と密接に関わっているので、職業柄、特に興味を持って調べています。

現在に至るまでの、長い長い文章になってしまいました。
こうした経緯で今の私のもの作りがあります。

限りある資源としての木。
材料を有効に無駄なく使用し、実用的でありながら木の魅力を引きだせ、デザイン性があること。
また、普遍的で付加価値が高く、継続して作ることができ、高価になりすぎず、永く使え、私の作る意義のあるもの。
そんなものが作れるようになりたいと思っています。